2007.6.8./11.7. 改訂(追加訂正)
医師・看護師など医療専門職にしか許されなかった医療的行為があるがために病院から退院できない、家庭に戻り地域で暮らせない子供たち・人たちがかつていた。
状態が落ち着き、その状態を維持するための医療的行為が素人の自分らにもできそうであることを知った家族が退院を望んだのかもしれない。
医療制度の改変で、急性期の治療を終えた患者を長く病院に留めておけなくなった病院が、そうした子供たち・人たちが必要とする行為が本人家族にも許されるとして退院させるようにもなった。
インスリン自己注射、経管栄養など決まった時間にするだけならばその負担はまだ軽いかもしれない。
しかし、気道(口や咽頭のど、あるいは気管切開チューブ内)に溜まった痰は吸引しなければ、その痰が呼吸を妨げるので吸引しなければならない。
24時間いつでも必要になりえる、夜中でも待ったなし。
それが毎日続けば、家族の負担は計り知れないものになる。
きょうだい含め家族の生活を大きく制約するものともなる。
医療専門職だけに支援を求めても24時間いつでも対応してくれるわけではない。経済的負担も大きい。
健康を維持していくために毎日必要な医療的な行為、それを「医療行為」だと言って限られた人にしかできないものとしていては、障害のある子供たち・人たちは、限られた空間を行き来するしかない。それすらできず、家に引きこもるだけ。
本人・家族を支援する非医療職の関わりが必要になってきた。
- “医療的ケア”とは?
- 呼び方イロイロ
“医療的ケア”、“医療的介護行為”、“生活のための医療”、“日常的・応急的手当”、“生活援助行為”、そして“生活支援行為”
- ・・・家庭などで家族・保護者・支援者が行っている、障害のある児(者)の健康維持に不可欠で、かつ日常的に必要とされるような行為、“生活援助行為”あるいは“生活支援行為”といえる;
- ・・・病院での(急性期の)治療としての「医療行為」とは異なるという意味で“医療的ケア”;
- ・・・“対象とする医療的介護行為(医療的ケア):保険診療において在宅医療として認められている行為、および、その他の、日常的に家庭において行われている医療的生活介護・援助行為”
- “経管栄養・吸引などの日常生活に必要な医療的な生活援助行為を、治療行為としての医療行為とは区別して「医療的ケア」と呼ぶ”(北住)
『医療的ケア 研修テキスト―重症児者の教育・福祉・社会生活の援助のために―』 日本小児神経学会社会活動委員会/松石豊次郎・北住映二・杉本健郎 編著 2006.11. → 手引書・ガイドライン
- 「医行為」概念の再整理(提案)・・・下川和洋先生の提案 2005.8.
結局、
-
医療的ケアとは、医師の許可により、医師や看護師の指導支援体制のもと、本人あるいは本人に代わって家族・介護者などが行なう
(1) 保険診療において在宅医療として認められている医療行為、たとえば、インスリン自己注射、ヒト成長ホルモン自己注射、血液凝固第VIII因子製剤自己注射、顆粒球コロニー刺戟因子(G-CSF)自己注射など
(2) 急性期の治療目的ではなく、生活支援のために行う行為、たとえば、たんの吸引、経管栄養、導尿、呼吸管理など
を言う。 特に後者だけを言うことが多い。
- “医療的ケア”の性格・特徴(北住)
普通、痰の吸引、経管栄養の注入などを言う場合が多い
- 「個別性」:ケアの内容、しかた、対処の仕方はそれぞれ異なり、コツや慣れもある、ケアする側の「習熟性」
- 「定時的ケア」と「適時的ケア」:前者=経管栄養、与薬、導尿など;後者=痰の吸引、坐薬の挿肛
- 「関係性は専門性を超える」(北住)・・・定時的ケアであっても、それぞれのこどもについての経験と状況に応じた判断と対応が必要とされる(「個別性」)、また、適時的ケアのようにその時その場で、待たせることなくしてあげるほうがよい場合があり、日常的にかかわりの深い人(家族や教職員)の方が、医療スタッフよりも適切に医療的な対応ができる場合がある・・・下記;
- 松本嘉一先生 「医療的ケア」という言葉を始めて使った方 1990.1.
- 上記“医療的ケア”の中に医療専門職がすべきものもあれば、指導訓練を経れば非医療職でも可能なものもある
- 医療的ケアが問題になっている場とは?
・・・現在、特に養護学校を中心とした教育現場で問題となっているが、就学前の通園施設、通常学校(一般の学校)、(養護)学校卒業後の成人通園・通所施設でも医療専門職(ほとんどイコール看護師)以外のスタッフが関わりうるかも問われている; 筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経難病その他での在宅者の家庭での“医療的ケア”を家族外の非医療者が行うことの是非などが問われている → ALS患者と吸引問題
「在宅」 から 「生活の場」 へ
- 養護学校の場合も、“医療的ケア”を必要とする児童・生徒が通うのが肢体不自由養護学校だけではない、都道府県によっては病弱養護学校の場合もある、知的養護学校の場合もある (c.f. 宮城県の場合、肢体不自由養護学校は全県に2校しかない、2校ある病弱養護学校はともに国立療養所に併設されている、ほぼ各障害圏域にある知的障害養護学校に地域のいろいろな障害ある児童生徒が集まる(宮城県内特殊教育諸学校リスト)
- 「学校ですごす時間は1年365日8760時間のうち13%」
- 「養護学校の12年間は卒業後の地域で生活するための準備期間」
“実践を通して確認されてきた基本的な視点・・・「教育的かかわりとしての医療的ケア」”
- 障害の重度・重複化、多様化によって、“医療的ケア”を必要としている障害児(者)が増えている;
- “医療的ケア”を必要としている児の多くは、現状では「訪問教育」あるいは「保護者付き添いの通学」; 即ち、家庭で、あるいは学校で、家族・保護者が“医療的ケア”を行っている; 保護者、多くは母親、にとって大きな負担;
- 地域によっては、横浜市のように1980年前後から障害児の教育を受ける権利を保障するために(医療的)ケアを「医療行為」ではなく、「生活行為」と位置付けて、医師の指導・監督の下で教職員がケアの一端を担っている学校もある; 千葉県では、「学校生活において教育上の医療的配慮を要する援助行為」、「主体的な教育行為の一環」として教員が関わっています; ?「先進都県」 横浜市、東京都、神奈川県、千葉県、神戸市、兵庫県尼崎市;
一方、「医療的ケアは医療行為である」ので非医療職である教員には許されていないとして教員が全く関わっていない地域・学校もある;
“医療的ケア”に対する対応は、自治体(都道府県)によっても異なる、同じ自治体でも学校によっても異なる;
- “医療的ケア”の一部を医療専門職(医師・看護スタッフ)だけにまかせるのか、養護学校の教師なども関わるのか? 選択肢
→ 各都道府県の動き・対応
下記 のように「3行為」については教員の対応が認められたこともあり、自治体は、少なくとも看護師を配置するようになった。
c.f. 2005年度、全都道府県で盲・聾・養護学校(287校)に看護師(約500名)が配置された、そのうち看護師のみ医療的ケアに対応しているのが26県、看護師と教員とが連携して実施しているところが21県とのこと 2006.4.8.
- 「医療行為」(「医行為」)
- “医療的ケア”は「医療行為」(「医行為」)であり、非医療職(非医療専門職、この場合≒医師・看護師)はしてはならないとされているが、・・・
- その根拠
・・・医師法17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。医師法(昭和23年法律第201号)(医師以外の医業の禁止)
・・・具体的にどうような行為を「医行為」というのか、具体的な記載はない、“法文に明記されていない、国の判断として「医行為」「医療的行為」とされているだけ”
何をしてはいけないと、具体的に記載されていない・・・上位法令である刑法には「緊急避難」の項があるため?
- 「違法性阻却」
・・・「形式的には法律に抵触するが、実質的には違法性を問われない、処罰されない」
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0415-2a.html (看護師等によるALS患者の在宅療養支援
に関する分科会(第6回)資料より → ALS患者と吸引問題)
正当化されるための要件
(1)目的の正当性
(2)手段の相当性
(3)法益衡量
(4)法益侵害の相対的軽微性
(5)必要性・緊急性
- ・・・本人・家族が行うことについては、「「違法性阻却」」により違法性が問われない
(・・・“犯罪は成立しない”、犯罪とはみなされない)
インスリン自己注射
/ 家族が行う痰吸引(別窓)
- c.f. 刑法 第7章 犯罪の不成立及び刑の減免
(緊急避難)
第37条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるために、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた場合は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
2.前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。
- ・・・(在宅で)家族以外の非医療従事者(教員・ヘルパーなど)にも一部の医療行為については「違法性の阻却」を摘要
- → 「医行為」概念の再整理(提案)・・・下川和洋先生の提案 2005.8.
- 下川和洋先生 “医療的ケアと法律” 2006年8月3日 http://homepage3.nifty.com/kazu-page/mcare/mc-25-3.htm
- ノーマライゼーションをめざして・・・障害のある児に関わる全ての人が自らの専門性にとらわれず、関わっていくこと、障害ある児に関わる人たちそれぞれが責任を分かち合うことが、地域で共に暮らすこと、インクルージョンにつながる。
- 非医療従事者による気管内吸引等のケアの実施について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/s1126-9e.html# 2004.12.7.
あるいは
こちら (PDF 45KB)(別窓)
大塚孝司 氏 人工呼吸器をつけた子の親の会(バクバクの会)会長
http://www.bakubaku.org/
“違法性の阻却”を越えて
“当事者主権から「医療行為」を考える重要性 ”
“日常的に必要なケアのうち「医療行為」と呼ばれるものも、十分な研修によって「人体に危害を及ぼすおそれ」がなくなった時点で、その性質が
「生活支援行為」へと変化し、医療従事者でない家族や家族以外の者であっても行為を実施できるのだと私たちは考えます。”
“「当事者主権」および「研修」をキーワードとして考える。”
-----------------(#より)-----------------
4.おわりに
近年の医学・医療技術の進歩によって、それまで病気や障害によって病院での生活を余儀なくされていた人々の生活の場が広がり、いろいろな場面での社会参加が可能になってきたことは、わたしたち国民にとって喜ぶべき恩恵であるはずです。
しかし、せっかくの恩恵もケアの担い手やその担い手が実施できるケアの内容を制限されることによって、その人らしい生き方を選択しようにもかなりの制約を余儀なくされることにつながります。さらに、「当事者の自立」という面から考えても、医療従事者や家族だけに依存しなければならない生活では、限界があると言わざるを得ないということです。
「日常的に欠かせない医療行為」の問題を考えるとき、ともすれば家族の介護負担の軽減の方が強調されがちですが、まず何より、当事者がよりノーマライゼーションの理念に沿った生活ができる方向で検討を進めていただきたいと強く要請いたします。 (太字・下線は原文のまま)
-----------------(ここまで)-----------------
第7回資料 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/11/s1126-9.html 平成16年11月26日(金)親の会連絡会医療的ケア連絡会ヒアリング(資料3)
厚生労働省医政局 “在宅及び養護学校における日常的な医療の医学的・法律学的整理に関する研究会” http://www.mhlw.go.jp/shingi/other.html#i-zaitaku 2004.6.11. 〜 2004.9.17.〜・・・
- 支援する側から
- 本人・保護者との間に信頼関係ができていれば、(医師や看護士の指導・支援のもと、)それなりの研修を積んで、本人・保護者の了解のもと、個別契約で、支援者、介護者である非医療職が医療的ケアを行う、そうした選択もありえる
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